雨のたまプラーザ
取引先との打ち合わせで、たまプラーザの駅に降りた。
東急田園都市線には、よく乗るが、たまプラーザに降り立ったのは、十年ぶりくらいだろうか。
取引先の担当者の女性は、30代半ばだろうか、頭の回転が速く、打ち合わせは問題なく、あっと言う間に終わった。きりっとした顔立ちに、時折、えくぼが浮かぶ素敵な女性だった。
駅に直結したビルのカフェでの打ち合わせが終わった。挨拶をして、店から出てくると駅前は冷たい雨だった。
ドラマの舞台になるような整った郊外の駅前の風景が広がっていた。子供を連れている母親が多い。幸せな生活がそこにある。
そういえば、十年前にたまプラーザに降り立ったのは、別れた妻との結婚前に新居を探しに来たのだった。十年前とこの駅の景色もすっかり変わった。そんなことも、こうした思い出さないと出てこないくらいの昔のことになったのだ。
しかし、そうか、さっきの彼女。あのえくぼは、別れた妻に似ていたのだ。どこかでまだ引きずっているのだろうか。馬鹿なことを、俺らしくないなと、コートの襟を閉めて、改札に向かった。