打ち合わせは東京駅で
「東京駅」と一口で言っても、広い。
そして、いつも人で溢れている。
東京駅日本橋口には、スタバが二軒ある。
一つは、三省堂書店の向い側。正確には、八重洲北口店と言うらしい。
そして、もう一つ、そこから50メートルほどのところに、もう一軒。
こっちは、まさに日本橋口の二階にある。
東京に向かって走ってきた高速バスが到着するのを見ることができる。
「元気そうね」
彼女は、クライアントの担当者を見送ると、微笑んで、人差し指で僕の脇腹をつつくようにした、
「使いたいカメラマンがいるから、まず紹介すると言われただけで、君だなんて。知ってたの?」
「知ってたけど、クライアントには言えるわけないじゃない。エクス・ボーイフレンドだなんて。この後、時間は?」
「特にないよ。もう少し長引くかと思ったら会社には、直帰すると言ってあるから。」
「そう、えっと、少し打ち合わせておきたいこともあるから、編集さんと。もう一杯、コーヒーどう?」
「そうだね、編集担当としてお話を伺った、その後、久々の再開を祝して、夕食でもどう?」
それなりに勇気を振り絞って、それでも軽く言うように努力した僕の言葉に、彼女はもう一度微笑んだ。
窓を見ると、彼女の故郷に遊びに行き、帰りに乗ったのと同じ高速バスが見えた。いや、そんなセンチメンタルなことよりも、今、どうするかだ。「なに勘違いしている」とか言われないように、慎重にしなくちゃ。どこで夕飯にしようか、ここからなら、なんだ3年前の初めて誘った時と同じじゃないか。自分自身がおかしくて、笑い出しそうになる。彼女が怪訝そうに、会話を止めた。おっと。
「もしもし、聞いてます?しっかりしてよ、クライアントの希望はね・・・・」