二度目の恋~世田谷美術館
久しぶりに会うことになった彼女とどこに行こうかと思案して、ふと思いついた世田谷美術館に行くことにした。
小田急の成城学園前駅で待ち合わせをして、駅前のコリアンレストランで食事をし、バスに乗って美術館に向かう。
この美術館は、どの駅からも距離があり、さらに最寄りのバス停はいくつもあるが、ちょうど前に止まるところがない。
バス停を降りて、住宅街を抜けて、青物市場の前を通る。
「覚えてる?あなた、前に来た時に、ここで市場の公開をやってて、早く行きましょうっていうのにお野菜なんか買っちゃって。」
「ああ、美術館のロッカーにようやく押し込んだ。」
「なにを見に来たんだっけ、なんだか不思議なものだったわ。」
「ヴィクトリア・アルバート美術館展さ」
「あら、西洋絵画? じゃあ、どうしてなにか不思議なものを見たって思ってるのかしら。」
「イスラム美術だったからね。」
「あら、あなたはそういう不思議なものが好きだったわよね。」
そういうと彼女は、わざと大げさな動きで腕を絡めた。
「不思議なものか」
彼女らしいと、笑いが込み上げた。
そういうところが好きで、そういうところが嫌いだったんだ。
「どうしてた?」
「知ってるんだろ?」
「知ってる。」
「君は?」
「知ってるんでしょ?」
15年ぶりに訪れた美術館の企画展のサブテーマは「約束の旅」
見終わって、まるで小さな聖堂のような美術館の回廊から夕焼けを見上げた。
「大人になって、前と違って、ごめんなさいって、素直に言えるようになったかしら」
彼女がつぶやく。
たぶんね。
☆